球磨川の流れが窓辺で瞬きを繰り返し トンネルを抜けるたび 古い橋脚が過去を語ります。停車中の静けさに 川のせせらぎが沁み込み 木の匂いが立つ。人吉温泉の湯気に誘われ 一駅歩く選択が いつもより軽やかに感じられます。雨季の水音 冬の白気 春の新芽 夏の蝉 その全部が 列車のリズムと重なり 心の奥で ゆっくり 反響します。途中下車して 河原に降り 石を拾い ベンチで一息 そんな小さな行動が 旅全体の印象を 豊かにするのです。写真を一枚 音を一秒 匂いを一呼吸 集めて カバンにしまい 次の駅で また 新しい 景色を 受け取りましょう。
唐津湾の青は 列車の速度で光を変え 白い砂浜と松林が ふっと寄り添います。車内に入り込む潮の匂いが 次の停車を合図し 海城の姿が 遠くで揺れる。小さな漁港まで歩けば 昼の魚が待っています。筑肥線の駅間は 思索にちょうどよく 立ち上る入道雲が 子どもの夏を呼び戻し 冬の凪は 音を減らし 会話を増やす。車窓の反射に 自分の顔が重なり 旅の意味を 少しだけ たしかめる瞬間が 訪れます。降りたら 潮風で深呼吸し 防波堤を渡り 波音をメトロノームに 次の計画を そっと つくりましょう。空 塩 光 影 笑顔。
黄色い車体が干潟のきらめきと並走し 鳥の影が窓を横切ります。有明海の潮位で 車窓の表情が大きく変わり 立ち止まる駅ごとに 塩の匂いが濃くなる。待ち時間には ポルトガル由来の甘い記憶も楽しめます。駅前で コロッケを頬張り 防潮堤に腰かけ 潮風を浴び 電鈴の音色を聞き 小舟の往来を眺める。線路と海の距離が とても近い瞬間に 旅人の心は ほどけていく。片道切符でも 往復切符でも 戻り道は 潮の香りが そっと 案内してくれます。黄色 砂 風 灯台 空 影 ひかり 鐘 波 窓 微笑み。
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